医薬保健学域長より

 dean平成26(2014)年度医学展が開催されるにあたり、これを企画し、実行する学生諸君へのお祝いとともに、来場される市民の皆様に心からの感謝と歓迎を申し上げます。医学展は、金沢大学医薬保健学域に学ぶ学生たちが主体となり、これまで学んできたことを市民に紹介する催しです。昭和27(1952)年、官立金沢医科大学開学30周年記念行事として医学部学生による医学展が始まりました。以来、4年ごとに開催され、平成に入って十数年にわたる中断がありましたが、平成18(2006)年に復活し、2008年からは毎年開催されています。金沢大学の学域再編に伴い医学、薬学、保健学の学生が参加するものとなり、2012年からは正式の大学行事として予算措置も受けることになりました。同年には金沢大学医学部の源流である文久2(1862)年の加賀藩彦三種痘所開設から150周年を迎えて、全学ならびに医学類の記念式典が行われ、医学展も記念事業の一環として盛り上がりました。このとき玄関前にできたモニュメント(医の源流、未来への継承)は、来場される市民の皆様にも感銘を与えるものと思います。本学と包括協定を結んでいる金沢美術工芸大学の美大祭も医学展と同日に開催される予定で、連携をめざしています。
 医学展が中断していた頃、学生が忙しくなり余裕がなくなったとか、インターネットの発達で市民の医学知識が増したので啓蒙活動の意義が薄れたとか言われたものですが、いざ復活してみると、市民の知識とともに医学・医療自体も飛躍的な進歩を遂げつつあるなかで、両者を橋渡しする医学展の役割は依然として大きいことがはっきりしました。何より、学生諸君が内向きの試験対策勉強等に閉じこもることなく、積極的に行動して社会にアピールするまたとない機会であると思います。市民の医学知識が昔より格段に多いとは言っても、いわゆる誤った医学の俗説も流布しています。原発事故による放射線の人体への影響、脳死臓器移植、遺伝子操作、iPS細胞により脚光を浴びた再生医療などについても、どのような意見を持つにせよそれは正確な知識に基づいたものでなくてはなりません。市民への正確な知識の説明を通じて、学生諸君自身が学ぶことも多いと思います。
 最後に、医学展の開催にご協力いただく地域の方々や教職員の皆様に心から感謝申し上げ、また来場される市民の皆様には医学・医療を真剣に学ぶ学生たちに暖かいご理解を賜るようお願い申し上げます。

金沢大学医薬保健学域長   井関 尚一